運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「ねえ真帆、さっきから私の話ばっかりだけど、真帆も何か吐き出したいことあるんじゃない?」


私の問いに、真帆はぴたりと笑うのをやめてしまった。かと思えば、肩を震わせて目に涙を溜め始める。

そんなにわかりやすい反応をされるとは思わなかったけど、どうやらビンゴみたい。


「……う。美琴ぉ」

「ど、どうしたの?」


いつもドライでサバサバしている真帆。そんな彼女の涙を見るのは初めてで、うろたえてしまう。


「研修、そんなに大変だったの? 意地悪な先輩でもいた?」

「……ううん。先輩はみんな優しいし、研修も何事もなく終えた。……でも、すっっごいムカつく医者がいて」

「医者……やっぱり、どこの病院にもいるんだねえ、くせ者的な医者」


私は藍澤先生の顔を思い浮かべながら苦笑し、真帆の頭をよしよしと撫でた。少し落ち着いてきたらしい真帆は、顔を上げてその医者について教えてくれる。


「サイボーグ……なの。ソイツ」

「え?」

「脳外科医だからかしらないけど、無表情で何考えてんのかわからなくて、人の感情なんて脳内の化学物質がなんたらかんたら、小難しい事ばっか言ってさ!」


泣いていたはずの真帆が、今度は怒り方面に感情を爆発させる。

なるほど、サイボーグって、ロボットみたいな人ってことか。それは確かに悪魔とは違う意味で面倒くさそうな人だな……。

想像上のイメージでとりあえず共感していると、真帆がぽつりと蚊の鳴くような声で言った。


「……でも、好きなの」


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