運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
スキャンダラスな悪魔
箱根デートから一週間。カレンダーは四月に変わり、私は記念すべき初出勤の日を迎えていた。各部署に挨拶をしてから副院長室へ移動し、工藤さんの指示で秘書としてのいろいろな事務仕事を教わった。
早苗先生は不在だったけれど、その理由を工藤さんの口から聞かされて、私は驚愕した。
「えっ。早苗先生が、辞める……?」
デスクのパソコンでの作業中だった私は、思わず画面から目を離して工藤さんを見つめた。
「ええ、今月いっぱいで。なので、今は引き継ぎに奔走しておられます」
「なんで急に……」
「それは僕にもわかりません。でも、人一倍責任感の強い北条先生が自ら仕事を投げ出すとは考えにくい。……根拠はありませんが、藍澤先生が絡んでいるのでは、と個人的には思っています」
藍澤先生……。その名前を聞いて、どくん、と心が揺れる。
デート以来彼には一度も会っておらず、特に電話もない。その間、他の人とデートしたり、早苗先生を辞めさせる算段をしていたってこと? 藍澤先生の本性は、やっぱり腹黒い悪魔なの……?
私は疑心暗鬼になって、表情を曇らせる。