運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「何にしようかな……」


外来の受付からも近い一階のコンビニは、病院内の店舗だからなのか、一般のコンビニより健康を意識した商品が多い。そのうえ美味しそうでもあるので、ついつい目移りしてしまう。

雑穀おにぎりと春雨スープでいいかな……。目当てのものをかごに入れ、最後にペットボトル飲料の棚の前で品物を選んでいたとき。


「なに美琴ちゃん、このチョイス、便秘なの?」

「へっ?」


パッと声のした方を振り向くと、すぐ横で藍澤先生が私のかごを見下ろしていた。

今日は白衣の中に手術衣でなく、黒紫のシャツを着ている。ネクタイはしておらず、シャツの第二ボタンまで開けているさまは、医者というよりホストのようだ。


「……大きい声で便秘とか言わないでください。違いますし」


無愛想に言いながら、ミネラルウォーターを手に取りさっさとレジに向かう。

今日は、あまり藍澤先生にかかわりたくない。彼に心を乱されて、午後の仕事まで上の空になったら大変だもの。


「なんだ、そっか。まぁ食物繊維を取るのは大事だしね」


私の“話しかけないでオーラ”を無視して、藍澤先生はぴったり私の後ろをついてくる。その途中で、お菓子の棚から大量の板チョコを取って、なぜか私のかごの中に投げ込んだ。


< 91 / 166 >

この作品をシェア

pagetop