運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「早苗先生が辞めるって話……聞きました。それって、藍澤先生のせいなんじゃないんですか?」


自分が出世するのに、彼女のことが邪魔だった。だから、彼女を辞めさせるように仕向けた……。手段はわからないけれど、そういう図式なんじゃないの?

責めるような瞳で彼を睨みつける。けれど、心のどこかでは否定してほしいと思っていた。

この間のデートで話した時は、医者という仕事に誇りを持っているように見えた藍澤先生。

そっちの姿が本当の彼なんだと、信じさせてほしかった。でも――。


「……美琴ちゃんは知らなくていいことだよ」


突き放すように淡々と告げた藍澤先生は、白衣をひるがえしてスッと私の脇をすり抜けていった。

なんでよ……。なんで、教えてくれないの?

上っ面の甘言なんかはもう、いらないから。

もっとあなたの考えていることを、教えて欲しいのに――。


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