運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
その週は、それ以上藍澤先生と接触することはなかった。
早苗先生の方とは一緒に仕事をすることもあったけれど、病院を辞めることについては「自分で決めたことだから」としか話してくれず、それ以上深く聞いてほしくなさそうだったので、こちらからも触れられなかった。
そして晴れないモヤモヤを胸に抱えたまま、迎えた金曜の夜。
「藍澤くんが当直なんて残念だったなぁ美琴」
「……私は全然。お父さんこそ、お母さんと一緒に来れなくて残念なんじゃないの?」
「まあ、風邪なら無理やり連れて行くわけにもいかないからな」
私は父の運転する車に揺られ、都内の某高級ホテルを目指していた。今夜、そこで開かれる大規模なパーティーに参加するためだ。
“日本のさらなる医療の進歩を目指して”という名目で、医療業界のお偉方はもちろん、政治家や芸能人まで集まるらしい。本当は母が同行する予定だったけれど、風邪で寝込んでしまったために、急きょ私が行くことになった。
いちおうドレスアップして参加するのがマナーのようなので、私もそれなりの服装をしている。
トップス部分は白レース、ウエストの大きなリボンとスカート部分がサーモンピンクでふんわりボリュームのある、清楚な印象がお気に入りのドレスだ。