愛されたい、ただそれだけ
私は幼稚園に入ってすぐ、登園拒否をおこしました。
お母さんに問題があるわけじゃない。
ただただトマトが嫌いで仕方なかった。
私はかたくなに大泣きして布団にしがみつくから、どうしたって連れていくことが出来なかった。
給食中、トマトの命の重さなんて言われてもよくわからなかった。作った人の命なんて言われてもよく分からなかった。
ただ教室の隅っことか、暗い部屋で食べ終わるまで一人でトマトとにらめっこする時間が苦痛で仕方がなかった。
そんなこんなで、幼稚園に通わない日が続いていたある日のことだった。
私のお母さんはが癌で入院した。滅多に会えない、会えたと思ってもすぐに病院に帰らなくてはいけない。
家にいたって母親はいない。
その事実が辛くて、忘れるためにまた幼稚園に行った。
正直理性よりも直感で動く幼児に食物の命の重さの話をしてもよくわからないに決まっている。
子供は思い通りに行動しなくて当然なのだ。
でもなんとなく、それとなく、私は今家が大変なんだと思った。
友達と通い始めたスイミングスクールにあんなに毎週ウキウキしていたが、どうでも良くなった。通えないので辞めることになったが、そんなことはどうでもよかった。そんなことよりも母親と会いたかった。
それから少しして、今度は父親も一緒に入院になった。
饅頭が食道に詰まって、消化不良で死にかけたのだ。手術で親は二人ともあまり家にいなかったけれど、私が元気に笑っていればお母さんも笑ってくれる。お父さんもそうだ。
私は二人に会えなくても頑張らなくてはいけないのだと思った。
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