眠らせ森の恋
プロローグ ~偽装婚約者のキケンな企み~




 秋名(あきな)つぐみは、婚約者、半田奏汰(はんだ かなた)が入っている風呂場のガラス扉の前に、ひとり、しゃがんでいた。

 すりガラスだし、曇っているので、向こうからこちらの動きは見えないはずだ。

 つぐみは、手にしていたワイングラスの中に、小瓶から茶色い液体を数滴垂らし入れた。

 しめしめ。
 これで奏汰さんは死―― 

 と思ったとき、

「つぐみーっ」
という絶叫とともに、ガラス扉が跳ね開けられた。

 ひゃーっ、と脳天から突き抜けるような悲鳴を上げたつぐみは、グラスを手にしたまま、飛んで逃げる。





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