眠らせ森の恋
どうやら、スパイのさがのようです
 




「どうも社長をこてっと寝かそうとしているようですよ」

 仕事の報告が済んだあと、西和田が去らないな、と奏汰が思っていると、彼は、急にそんなことを言い出した。

 ふうん、と言いながら、何故、お前、つぐみの様子を俺にチクる……と思っていた。

 スパイ癖か?

 自分ではなにも疑問に思っていないようで、では、と去ろうとする西和田を呼び止めた。

「待て、西和田」

 はい? と振り向いた西和田に、さっき外に出たとき、たまたまエレベーターで一緒になった掃除のおばちゃんがくれた飴を投げてやる。

「お駄賃だ」

 これでっ? という顔で西和田は、こちらを見た。



< 103 / 381 >

この作品をシェア

pagetop