眠らせ森の恋
 



 ああ、しまったああああ、とつぐみはレシピ本をつかんだまま、心の中で叫ぶ。

 いや、実際に叫んでしまっていたかもしれないが。

 温まったら眠くなると思ったのにっ。

 奏汰の言う通りだ。
 栄養満点。

 身体に効きすぎて、元気になったら、目が覚めてしまうではないかっ。

 大きなダイニングテーブルに奏汰と差し向かいで座り、料理を食べながら、
「大失敗です~」
と思わず叫ぶと、

「なんでだ。美味いぞ」
と言われてしまう。

「えっ?
 ほんとですかっ?」

 とりあえず、褒められたことが嬉しく、
「どんどん飲んでくださいっ」
と言ったあとで、

 しまった。
 飲まないでくださいっ、と焦る。
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