眠らせ森の恋
 少しガラス扉を開け、はい、と差し出すと、水に濡れた奏汰の手がそれを受け取る。

 それだけで、なんだかどきりとしていた。

 すぐにワインを開けたらしい奏汰が、
「グラス貸せ。此処で注ぐ」
と言い出した。

「いえっ。
 私がお入れし致しますっ」
とつぐみは慌てて、ボトルとワインオープナーを受け取る。

 大きくガラス扉を開けてしまって、風呂の中が見えそうになった。

 ひーっ、と思いながら、うつむき、両手を突き出す。

 一瞬の間のあと、奏汰がそれを渡してくれた。

「では、注ぎます」
と言うと、

「何故、扉を閉める。
 見えんぞ」
と言われる。

「お、音をお楽しみください」
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