眠らせ森の恋
やっぱり、ちょっと来い
ふう、今日もなんとか此処までミスなく出来ましたよ、とつぐみは一息ついて、微笑んだ。
あれから一週間、特に変わった用事を命じられることもなく、日々過ぎていた。
「あのー、西和田さん」
仕事が一段落したところで、つぐみは、すぐ側の席に居る西和田に呼びかけてみた。
すぐ側の席というか、西和田は新人教育の係になっているので、若いが、いわゆるお誕生日席的なところに座っている。
そして、最も教育係の手をわずらわせているつぐみは、もちろん、彼の一番目の届く席だ。
「もし、珈琲持って入ったとき、社長が寝てらしたら、その珈琲どうしたらいいんですかね?」
西和田は答えかけ、渋い顔をする。
最近、自分が社長に珈琲など持って行っていないと気づいたからだろう。
「秋名……。
それ、いつの話だ」