眠らせ森の恋





 さて、給湯室に行く時間だ、とつぐみが廊下を歩いていると、その給湯室の前に、英里ともう一人、今川正美(いまがわ まさみ)という先輩秘書が居た。

 ともに、専務の秘書のはずだった。

「あら、配属の決まらない秋名さん。
 今日はお茶当番?」
と言われる。

 はい、と言って給湯室に入ろうとするが、入り口を塞がれた。
「ねえ、あんた、どういうつもり?
 たいして仕事も出来ないくせに、チャラチャラして」

 うーむ。
 どうしたことだ。

 ヤンキーとやらの多いゲーセンでもないのに、インネンを吹っかけられている。

 初めての体験に、ドラマみたいだ、と思いながら、英里を見下ろしていた。

 自分の方が背が高いからだ。
< 16 / 381 >

この作品をシェア

pagetop