眠らせ森の恋
 



 タクシーで帰る両親を笑顔で見送りながら、つぐみが、
「げせません」
と言うと、なにがだ? と奏汰が振り返る。

「お父さんは奏汰さんが気に入っているようです」

「なにが解せない。
 立派な婿じゃないか」

「自分で言う人にロクな人は居ないと思いますが」

 なにっ? と振り向いた奏汰に、
「でも……ありがとうございました」
と本気で感謝し、頭を下げると、うん、と奏汰は頷いていた。

「お酒まで作っていただいて」
と言うと、

「ま、お前の親だからな」
と言う。

 両親が帰り、奏汰と二人家に入り、鍵をかけた瞬間、ほっとしている自分に気がついた。
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