眠らせ森の恋
 変なもんだな、と思う。

 つい、この間まで、自分にとっての家族は両親たちだったし。

 家は、両親と暮らしていたあの家だったのに。

 今は此処が自分の家のように、ほっとしている。

「なにか呑むか」
 奏汰がそう訊いてきた。

 もう結構呑んだけど、とは思ったのだが、二人で呑んで、一息つきたいような気もしていた。

「……はい」
と笑って答える。

 カウンターに座ると、奏汰は手際よく卵を割っていた。

「疲れたときには甘いもの。
 ホットカクテルを作ってやろう」

「奏汰さん」
「なんだ?」

「なにかおつまみ作りますよ」
と言って、つぐみが立ち上がろうとすると、奏汰は、いや、いい、と言う。
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