眠らせ森の恋
 




 つぐみの気配がするな、とキーを叩く手を止め、奏汰は顔を上げた。

 ドアの向こうから、なんだか落ち着きのない気配がする。

 すると、コンコン、とドアが叩かれ、

「海……」
と声がした。

 決めてねえだろ、合い言葉。

 そして、定番は、山で川だろ。

 海……?

「カメ」
と言うと、ドアが開いた。

 いや、何故、開く。

 そして、そもそも逆だ。

 開けるの俺だろ。

 中に居るの俺なんだから……と思っている間にも、油断なく辺りを見回したつぐみが、するっと入ってくる。
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