眠らせ森の恋
 小学生の調理実習か。

「一緒に食べるか? 多いから」
と言うと、

「いえいえ。
 勝手に愛妻弁当を食べたら、秋名に怒られますから」
と遠慮して言ってくる。

 いや、ひとりでは食べ切れそうにないんだが……。

 しかし、本当に他の男に食べさせたいかと言うと、そんなこともないような気がしていた。

 つぐみ、初のお弁当だからだろうか。

 朝から、
『決してこちらを見ないでください』
と鶴のようなことを言って、せっせと詰めていた。

 初のお弁当、か。

 これが最初で最後にならなきゃいいんだが、と思いながら、見た目も美しく並んだおかずを見ながら思っていると、西和田が、

「冷蔵庫に入れておいて、持ち帰られるといいですよ。
 二人なら、それで晩ご飯も食べられます」
と言ってくる。

 そうだな、と答えた。

 見れば、箸は一人分しかない。

 これ全部一人で食べられるとでも思っているのか、つぐみ、と思いながらも、なんとなく笑っていた。
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