眠らせ森の恋
 




 家に帰り、ゆったりと大きなソファに寝転がり、ぼんやり本を眺めていたら、奏汰が帰ってきてしまった。

「あっ、お帰りなさい。
 早かったんですね」

 すみません。
 まだ、なにもしてません、とつぐみが言うと、側に来た奏汰が、

「またなに読んでたんだ?」
と胡散臭げに訊いてくる。

 だが、今日は見せられないような本ではなかった。

 伏せてある本の表紙を奏汰が見る。

「……眠り姫?」

「ちょうど近くにあったので」
と言うと、なんの近くだという顔をされる。

 いや、図書館に、ちょうど眠れない貴方に、というコーナーが出来ていて、そこからいろいろ借りてきていたのだが。

 綺麗なお姫様が目を閉じている表紙を見ながら、目を閉じたら綺麗なの、うちの場合、奏汰さんの方だけどね、と思っていた。

「いいですよね。
 百年眠ったら、愛する相手が目の前に現れてるなんて」
と呟いてしまう。

「たまには俺が料理してやろうか」

 なにを思ったか、奏汰がそんなことを言ってきた。
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