眠らせ森の恋
「い、いえ、その。
 私は起きてます」
と言うと、手を握りにくいだろ、と言われる。

「だ、大丈夫です。
 でも、上がるのは上がらさせてもらいます」

 では、失礼して、とつぐみはベッドにそっと上がり、奏汰の枕許に腰を下ろした。

 まだ奏汰はつぐみの手首を握っている。

「あの、手を握るんじゃなかったんですか?」
と言うと、おお、そうだったな、と奏汰はつぐみの指に指を絡からめ、握り直してくる。

 いや、やれ、という意味ではなかったのですが……。

 どちらかと言えば、はずして欲しかったんですよ。
 恥ずかしいから……とつぐみは俯く。

 ただ枕許に座っているのも間が持てないので、
「あのー、なんで男の人はニンニク好きなんですか?」
と訊いてみた。

 奏汰からは、
「だって、美味いじゃないか」
という端的な言葉が返ってくる。

 いやまあ、そうなんですけどー。
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