眠らせ森の恋
「……秋名」

 あ、名前、覚えてくださったんですね、と思っていると、

「秋名つぐみ。
 母一人、父一人、兄一人、弟一人。名門私立女子大卒。

 育ち良し、容姿良し、頭も良し。

 立ち居振る舞いも悪くはないが、注意散漫につき、粗相が多い」

 うっ。
 名前以外の余計な情報が――っ。

 情報漏洩ですっ、と思ったが、社長だった。

「秋名つぐみ」
 は、はい、と見上げると、奏汰はものすごく困った顔をして言ってきた。

「俺と結婚しろ」

 つぐみは奏汰を見上げて一瞬黙る。

 相手は社長なので、言葉を選ばなければと思ったのだが、つい、本心がもれていた。

「お断りです」



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