眠らせ森の恋
とりあえず、結婚してもらう
「お前に選択する権利があると思っているのか」
そう奏汰は言い放つ。
「どんな横暴ですか。
此処は奴隷市ですか。
女工哀史ですか」
なにを言ってるんだお前は、という顔で見られる。
「俺もお前と結婚などする予定はなかったんだが、仕方がない」
と奏汰は言う。
仕方がない?
「実はあのあと、俺の送ったメールを読んで、白河さんが、じゃあ、奏汰くんの仲人をするために元気にならなきゃな、と言い出して、奥さんが涙を流された――
まではよかったんだが」
と奏汰はスマホを手に、また渋い顔をする。
「いや、結果的には良かったんだが。
白河さんは元気になってしまわれた」
自分で言っておいて、少し上を見、
「しまわれたってのも変だな」
と言い直していた。