眠らせ森の恋
 



「し、失礼しました」

 数分後、青い顔で、ふらっと奥の院から出て来ると、西和田がどうしたっ? という顔で見る。

 また、なにかやらかしたのかと思われたようだ。

 いや、どちらかと言うと、やらかしているのは社長の方だが、と思ったとき、いきなり今閉めたばかりの扉が開いて、奏汰が顔を出した。

「おい、つぐみ」
 いきなり呼び捨てかっ、と思っていると、あの眼光で脅してくる。

「まだ誰にも言うなよ」

 あ、当たり前です~、と思っている間に、こちらの返事も聞くこともなく扉は閉まった。

「大丈夫か? 秋名」

 そう西和田に言われ、はい、と言おうとしたのだが、つぐみがそう答える前に、西和田は閉まった扉の方を見ながら、

「大丈夫か? 社長」
と呟いていた。
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