眠らせ森の恋
 



 翌日、社長室で奏汰が大欠伸をしていると、西和田がやってきた。
「どうかしましたか? 社長」
と訊いてくる。

「いや、寝不足で」
と言うと、なにか身構えたように、

「……秋名ですか?」
と訊いてくる。

「そうなんだ。
 あいつ、どうしても自分が編むと言って聞かなくてな。

 つぐみが風呂に入ってる隙に、編んでやったら、地団駄踏んで悔しがっていた」

 案の定、なにやってるんだ、この二人は、という顔をされた。

「社長、編み物がお好きなら、秋名に編んでやったらいいじゃないですか」
と言ってくるが、別に編み物がしたいわけではない。

 そう思っていると、西和田が、
「もしかして、秋名が編み物に夢中なのがお嫌だとか?」
と訊いてきた。

「そんなわけないだろ」
と言う。

 そんなわけない……、はずだ……。

 いや、ほんとうに……。




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