眠らせ森の恋
昨夜、自分が風呂に入っても、風呂から出ても、つぐみは、せっせせっせと編み物をしていた。
このせっせせっせが可愛いんだが……。
ちょっとはこっちを見てみないか? つぐみ。
そんなことを思いながら、奏汰は必死にセーターを編んでいるつぐみの横から立ち上がる。
しばらくして戻ってくると、
「ほら」
とつぐみの前に、グラスを差し出した。
「あ、ありがとうございます」
とようやく顔を上げたつぐみがその淡い琥珀色の酒を見る。
これは? という顔をしていた。
「江戸のカクテル。
柳陰(やなぎかげ)だ。
ま、柳陰は上方の呼び方で、江戸では、本直(ほんなおし)と言ってたんだが」
つぐみは一口呑んで、
「甘い……」
と呟いていた。