眠らせ森の恋
「でも、呑みやすいです」
と氷の入ったグラスを見つめ、言ってくる。

「氷入れたからな。
 少しすっきりした感じがするだろう。

 焼酎とみりんだから、ちょっと甘いな。

 落語の『青菜』にも出てくる江戸時代のカクテルだ。

 当時は冷たいのは井戸くらいだったから、井戸で冷やして呑んだそうだぞ」
 
 つぐみはもう一口、口に入れ、
「うん……。
 今は、この甘さがすごくいいです」
と呟いていた。

「そりゃ、疲れてるからだ」
と言いながら、側に腰掛けると、

「奏汰さんは呑まないんですか?」
とこちらを振り向き、訊いてきた。

 ああ、とキッチンを見る。

 自分のは特に作ってはいなかった。

 すると、
「はい」
とつぐみがグラスを自分に差し出してくる。
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