眠らせ森の恋
「出来たぞ!」
「出来ましたねっ!」

 巨大ダムが完成して喜ぶ人々くらいの勢いで、二人で手を取り、喜び合う。

 華やかな草色の立派なセーターが出来上がった。

 自分は、ようやく完成して、ほっとしていたが、つぐみは、何故か、すぐに、つまらなさそうな顔をする。

「……終わってしまいました」
と残念そうに呟いている。

 おい、そんなに編み物にはまったのか?

 また、次の毛糸を買ってくるんじゃないだろうな? と思っていると、つぐみは渋い顔をし、
「奏汰さんと奪い合って作るの、楽しかったのに」
と言う。

 そこか、とちょっと笑うと、つぐみはローテーブルに置いていたグラスを取って、柳陰を一口呑み、
「美味しい。
 ありがとうございます」
とこちらを見て笑った。

 やり遂げた顔で、つぐみは――

 いや、半分は、俺が編んだんだが……

 セーターを膝に置き、満足そうに酒を呑んでいた。
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