眠らせ森の恋
「なんで、俺の前で、お前を呼び捨てにしたんだろうな?」

「え? なんでって?」

「お前、社長となにか関係あるのか?」

「いや、特になかったんですけどね、一週間前まで」

 いや、この言い方だと、今、社長と付き合ってでもいるかのようだ、と思っていると、案の定、西和田は、ふうん、という顔をする。

 慌てて弁解しようとしたが、今の言い方が少し引っかかった。

「俺の前でってなんでですか?」

 確かに仕事中に呼び捨てはいけなかったかもしれないが、西和田は信頼できる秘書のはずだ。

 社長のプライベートまで知っていても問題はないと思うのだが、と思っていると、西和田は、ああ、とその視線に気づいたように言う。

「まあ、お前は莫迦じゃないから誤摩化せないか」

 俺は専務のスパイだ、と言う。
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