眠らせ森の恋
眠らせ森の恋
「あら、素敵に出来たじゃない」
奏汰から強奪してきたセーターを見せると英里がそう言った。
他のみんなも感心したように見てくれる。
「七割、奏――
えーと、このセーターあげる人が編んでくれたんですけどね」
と言って、
「それ、なんの意味があるの?」
と言われてしまったが。
いや、いいのだ。
二人で奪い合いながら作るのが楽しかったのだから。
見れば、目が綺麗なところと、そうでないところがある。
……そうでないところが私だな、と思いながら、みなに見せたあとで、紙袋にまたそれを詰め、秘書室に戻ると、西和田に、
「またお茶持ってっていいですか」
と訊いた。
「水物ばっかり持っていきやがって、社長を水死させる気か」
さっきの湯呑み、下げに行けばいいだろ、と多少イラついたように言われる。
「さすがですね、西和田さん」