眠らせ森の恋
 



 ノックし、失礼します、とつぐみが社長室に入ると、奏汰は後ろの今にも射殺されそうな大きな窓から薄曇りの空を見て、何事か考えているようだった。

 怖いよ。

 なんか怒ってる?

 でも、英里さんが、会社にあるなら、今すぐ持ってこいって急かすから。

「社長」
と呼びかけると、奏汰が振り向いた。

 だが、特に笑ってもいない。

 なんですか。

 なんなんですか、その顔は。

 昨日は二人で楽しく編み物したじゃないですか。

 だからこそ、みんなにも見て欲しかったのに、としょんぼり思っていると、奏汰が口を開いた。

「お前、来週末、暇か?」

「暇ですけど?」

 そう答えると、わかった。じゃあ、いい、と言われてしまう。

「暇だといけないんですか?」

 なんかそんな感じの訊き方だったなと思い、そう訊いた。
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