眠らせ森の恋
 



「失礼しました」
と外に出ると、英里が仁王立ちで待っていた。

「やっぱりね」
と言う。

 な、なにがですか? と下げてきた湯呑みを手につぐみは固まる。

「あんたの好きな男って、社長だったね」

 いや、そういう言い方をされるのは、ちょっと抵抗があるんですけど、と思っていた。

「セーター、社長に戻しに行ったんでしょう?」

 うっ。

 罠でしたか……と思いながら、
「なんでわかったんですか」
と訊く。

「あんたを社長がいつも見てるからよ」

「私がじゃなくてですか?」

「最初はなにかやらかしそうだからかな、と思ってたんだけど。
 そのうち、なんか微笑ましげに見てるなと気がついて」

「いや、全然微笑ましげじゃないですよ」
と遮るように、つぐみは言う。

 英里はこちらを上目遣いに見、
「付き合ってるの?」
と訊いてくる。

「いやあ、どうなんですかね?」
と曖昧に答える。
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