眠らせ森の恋
 



 なんだか立て続けに悪い夢を見た……。

 ひんやりした手が額に触れて、奏汰は目を覚ました。

「凄い熱じゃないですか、奏汰さん」
 つぐみが自分を覗き込んでいる。

「冷たいな、お前の手」
と言って握る。

 冷たくて可哀想だと思ったからだ。

 だが、つぐみは赤くなって俯き、
「全然冷たくないですよ。
 奏汰さんがお熱があるからです」
と言う。

 お熱って子どもか、と思いながら、起き上がろうとすると止められる。

「今日はお休みになった方がいいと思います。
 風邪ですよ」

「いや、俺は風邪ひいたことのない人間だぞ。
 ひくわけないじゃないか」
と言ったのだが、

「ひいてます」
とあっさり、つぐみは言ってくる。

「いや、俺がひくはずはない。
 風邪は、精神がたるんでる奴がひくものだ」

「じゃあ、たるんでるんですよ」

 こいつ、ぽあーっとした、いつでも小春日和な顔で容赦がないな。
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