眠らせ森の恋
「寝ててください。
 西和田さんに連絡しておきますから」
と言うつぐみに、

「……西和田の連絡先を知っているのか」
と言うと、

「いつも秘書室にいらっしゃるじゃないですか」
と言う。

 そういう意味か。

 まぎらわしいんじゃ、ボケ。

「奏汰さん……」

 なんだ? と言うと、
「思ってることが全部口から出てますよ」
と言われる。

 うーん。
 どの辺からだろうな。

 今、お前、俺より西和田の方がいいんじゃないかとか思ったら、それもまた、全部口から出てしまうのだろうか。

 いっそ、出したい気もしているが。

「咳とか出ませんね。
 知恵熱ですかねー?」
とつぐみは言う。

「なんでだ……」

「いえ、初めて編み物なさったので」

 頭を使い過ぎたのかと、と言う。

 知恵熱か。

 ある意味そうかもな、と思いながら、つぐみを見た。

 女の一挙手一投足に振り回されるなんて初めてのことだから。
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