眠らせ森の恋
 



 退出したつぐみを英里たちが待っていた。
「社長、大丈夫?」
と訊かれ、はい、たぶん、と振り返りながら言う。

「で、結婚するわけね」

 聞いていたのか、そう言ってきた。

「……はい、弾みで」
と言うと、

「なに渋い顔してんのよ。
 社長のなにが不満なのよ」
と睨まれる。

「いや、不満、というわけではないのですが。

 なにかこう、結局、社長の思惑と策略にはまったようなというか」

「あら、はまりたいわ。
 そういう策略なら」
と英里は言い、正美は笑っていた。

「あんた、社長が嫌いなの?」
と正面切って英里に問われる。

 つぐみは、うーん、と考えた。

 一緒に写真を撮られてからの様々なことが思い出された。

 強引で勝手な人だとは思うが、一緒に暮らしていて楽しくなかったかと言うと、そんなこともない。
< 329 / 381 >

この作品をシェア

pagetop