眠らせ森の恋
「会社なんて呉越同舟で当たり前。
 まあ、頑張っていきましょう」
とポン、と奏汰の肩を叩く。

 専務、と奏汰の側に居た西和田が呼びかける。

「私ももう歳だ。
 そう長くは会社に居ないでしょう。

 君を社長につけたのは、君の今後のことを考えてのことだよ。

 君が私につきたいと言ったから、スパイしろと言って社長の許に行かせたが。

 スパイしているつもりで、眺めていたら、社長のこともよくわかって重宝されたろう」

 ……専務。
 立派な人だ。

 悪人ヅラだが、奏汰さんより、よっぽど、と思っていると、奏汰に、
「つぐみ、思ってることが顔に全部出てるぞ……」
と言われる。

「第一、君はもう立派な社長の秘書だ。
 秋名くんのことを私に報告しなかったろう」

「ご存知でしたか」
と言うと、前社長から聞いていた、と言う。
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