眠らせ森の恋
 



 なんだかんだ言っていたわりに、奏汰は、唐揚げをぺろっと食べていた。

 風邪をひいたのは、やはり、気が弱っていたからだったのだろうかな、とつぐみは思う。

 しかし、会議が上手くいったので、また調子こいて、
「たまには風邪をひくのも悪くないな」
とほざいていたが。

 ひいたら、きっとまた、今にも死ぬようなこと言って騒ぐくせにな……と思っていた。

「よし、つぐみ。
 お前のカクテルのおかげで、風邪もバッチリ治ったぞ」

 そうですか、と言い、つぐみは洗い上がった茶碗を食洗機から出して片付ける。

「そろそろ寝ようか」

 そうですか、と言い、歯を磨く。

「……おい。
 いつまでも素知らぬ顔してられると思うなよ」
と言いながら、奏汰は、そのままさりげなく逃げようとしたつぐみを抱き上げた。

「お姫様抱っこで運んでやる。
 今日は見返りがあるはずだから、喜んで」
と言ってきた。

「ないですっ、見返りなんてっ」
とつぐみは奏汰の腕の中で暴れる。

「往生際悪いな。
 結婚するんだろ、俺と」

「しませんっ。あっ、いや……しますけど」
と言ってしまい、笑われた。
< 340 / 381 >

この作品をシェア

pagetop