眠らせ森の恋
 奏汰は、この間つぐみが、エスカレーターだったらよかったですね、と言った螺旋階段を上がりながら、

「俺は女に尽くす男は莫迦だと思ってたんだが、悪くないな」
と言い出した。

「その最初の発想、どうかと思いますけど……。
 でもあの、よく考えたら、私、かなり、奏汰さんに尽くしてませんか?」

 お酒を呑ませ、賛美歌を歌い、満腹になるように美味しい料理を作り、ツボを押す。

 よく考えたら、ただ、せっせと奏汰に尽くしていただけのような気もしている……。

「俺を眠らそうとしていただけだろうが」
と一番上に着いた奏汰が睨んで見せる。

「だが、今日はなにしてもいいぞ」

 そう言った奏汰は、
「……絶対、眠らない」
と言って、つぐみに口づけてくる。

 そのまま奏汰の部屋に連れ込まれたつぐみは、やはり暴れ、奏汰の腕から飛び降りる。

「いや、待ってっ。
 待ってくださいっ」

 ストップですっ。
 ノーッ! と怪しい外国人のようなリアクションで手を突き出す。
< 341 / 381 >

この作品をシェア

pagetop