眠らせ森の恋
「よし、わかった」
と手を離し、つぐみの横に寝ると目を閉じた。

「襲われるのが嫌なら、お前が襲え」

 ええーっ!? と言うつぐみの腕をつかみ、つぐみの顔を自分の顔の近くに引き寄せる。

「キスしてみろ。
 出来ただろ、あのとき」

 い、いえ……あのときはですね。

 弾みというか、とぐずぐず思うつぐみの前で、奏汰は、ほら、とまた目を閉じる。

 写真を撮られる直前に見た、あの整った顔が目の前にあった。

 ほんとに王子様みたいだな、と思う。

 眠れる森の王子様だ――。

 そういや、私のことを魔女とか言ってやがったな、と思いながらも、つぐみは、奏汰の顔の側に手をつく。

 その顔を見下ろしながらつぐみは言った。

「……そういえば、眠り姫が百年の眠りに落ちるとき、目覚めた姫が寂しくないようにと、従者たちもみな一緒に眠らせられますよね」

 突然、なにを言い出したという顔で、目を開け、奏汰が見る。
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