眠らせ森の恋
番外編 私、おそろしいものを手に入れてしまいました……
 



 手編みのセーターを着ても違和感のない季節。

 つぐみは今日も秘書室で働いていた。

「あー、疲れた」

 珍しくずっとパソコン打っていた英里えりが伸びをしながら、通りかかったつぐみに言ってくる。

「ちょっと社長夫人ー。
 お茶淹れてきてよー」

「おい、田宮……」
とデスクで顔を上げた西和田が言うが、

 いや、この英里の傍若無人な態度のおかげで、つぐみは、ずいぶんと助かっていた。

 英里のこういう茶々が入らなければ、みんな、奏汰(かなた)と結婚した自分に対して、かしこまってしまっていただろうから。

 英里さんは、きっと、その辺のところ考えて、やってくださってるに違いないです。

 そう思うつぐみを振り返り、英里が言った。

「ほら、さっさとしないさいよ。
 あんたって、ほんと何ヶ月経っても使えないわねえ」

 ……と思いたいです。






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