眠らせ森の恋
 



「はい。
 西和田さん、お茶です」

 ついでに他の人たちにも淹れてきたつぐみが、西和田にもお茶を出すと、西和田はノートパソコンの画面を見たまま、

「ああ、すまん」
と言う。

 なんだか渋い顔だ。

 専務から見合いの話が来て以来、ずっとこうだ。

 見合いしてしまえば、立場上、西和田からは断れないようだった。

 だが、奏汰が言うには、そのお相手は、

「ちょっと見ないような美人」

 らしいので、とりあえず、会ってみればいいのではないかと思うのだが。

 ……まあ、私は、お相手の方のことを奏汰さんがそのようにおっしゃったことの方が気になりますけど。

と軽く嫉妬しつつ、つぐみが、とととっと自分のデスクに戻ろうとしたとき、西和田が呼んできた。
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