眠らせ森の恋
父親らしく、娘は渡さんとか一度は言ってみて欲しかったんだが、と思っているつぐみの横で、小枝子が、
「お父さんも寂しいみたいだけど、ほっとしたみたいよ、あんたの結婚が決まって」
と二棹目の箪笥を見ながら微笑む。
「なんで?」
「そういうものなの。
あんたも親になればわかるわ。
いずれ自分たちが年をとって居なくなっても、娘に新しい家族が居ると思えば安心だし。
此処まで育て上げて、あんたをこの先ずっと守ってくれる人に無事渡せたってことで、なんだか親は安心するのよ」
なんか偽装結婚なのが、申し訳なくなってきたな、と思っていると、
「安心なさってください。
お嬢さんは必ず幸せにします」
という声が背後からした。
そんな笑顔は見たことないぞ、と思われる人当たりのいい、信頼に足りそうな笑顔を浮かべた奏汰が立っていた。
「まあ、奏汰さん。
お世話になります」
と小枝子は深々、婿―― だと思っている男に頭を下げていた。
「お父さんも寂しいみたいだけど、ほっとしたみたいよ、あんたの結婚が決まって」
と二棹目の箪笥を見ながら微笑む。
「なんで?」
「そういうものなの。
あんたも親になればわかるわ。
いずれ自分たちが年をとって居なくなっても、娘に新しい家族が居ると思えば安心だし。
此処まで育て上げて、あんたをこの先ずっと守ってくれる人に無事渡せたってことで、なんだか親は安心するのよ」
なんか偽装結婚なのが、申し訳なくなってきたな、と思っていると、
「安心なさってください。
お嬢さんは必ず幸せにします」
という声が背後からした。
そんな笑顔は見たことないぞ、と思われる人当たりのいい、信頼に足りそうな笑顔を浮かべた奏汰が立っていた。
「まあ、奏汰さん。
お世話になります」
と小枝子は深々、婿―― だと思っている男に頭を下げていた。