眠らせ森の恋
「わ、笑ってます……」

 そう訴えてみたのだが、顔が強張っている、と言われる。

 じゃあ、この頬が触れそうな位置にある顔を退けるか。

 肩に回った手を外してくださいっ、と思っていたのだが、それも言えないくらい緊張していた。

 奏汰はこちらを振り向き、言ってくる。

「くすぐろうか。
 それとも、キスでもしようか」

 大真面目に言う奏汰に、なんでですかっ、と思っていると、

「とても打ち解けているように見えないからだ。

 人はスキンシップがあると、距離が近くなると聞く。

 だから、キスのひとつもしてみようかと言ったまでだ」

 いやいやいや。

 そんなことされたら、ますます顔面蒼白になってしまいますけどっ、と思っているつぐみの表情を見て、奏汰は、

「じゃ、俺にキスされたくなかったら、死ぬ気で笑え。

 いや、笑う必要はない。

 俺を愛し、信頼しているかのような表情で微笑め」
と無茶を言ってくる。
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