眠らせ森の恋
 あのー、それは一体、どんな表情なのですか、と思ったが、奏汰自身もわかっているようにはなかった。

 だが、幾らイケメン社長とはいえ、こんなことでファーストキスを奪われるのも嫌なので、なんとかそれらしい表情を作ってみた。

 奏汰は何枚か撮った写真を確認したあと、
「まあ、これでいいか」
と呟き、手を離してくれた。

 ほっとしていると、それを何処かへ送信している。

「あの、それ」
と言ったのだが、奏汰は、

「よし、行っていいぞ」
と既にこちらには興味を失ったように言って、スマホを置いた。

 秘書としては、すぐに消えるべきだとわかっていたが、今の写真を何処に送ったのか気になって仕方がない。
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