眠らせ森の恋
 



「つぐみ、風呂空いたぞ」

 奏汰が風呂から出て来たとき、つぐみはソファで膝を立て、爆睡していた。

「おい、こんなところで寝ると風邪ひくぞ」

 そっと肩に触れ、動かしてみた。

 すると、つぐみは寝返りを打つように顔を横に向ける。

 すると、彼女の手がかろうじて支えていた本が転がり落ちてきた。

 いてっ、と奏汰は足に刺さるように落ちてきたそれを手に取る。

『こうすれば眠くなる』?

 こいつ、不眠症だとか?

 ――なわけないよな、と起きる気配もないつぐみを見た。

 最初の夜からよく寝ている。

 慣れない家だから、とかいうことも一切なく、爆睡していた。

 なんだかんだで神経太いな。

 やれやれ、と思いながら、奏汰は、つぐみの身体の下に腕を差し込み、抱き上げた。
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