眠らせ森の恋
「口に唐辛子塗られてヒリヒリする夢を見ました」
朝食の席で、つぐみがそう言うと、奏汰が、何故か吹き出した。
「意外に記憶力がいいな」
と言う。
えっ? 塗られてるっ? と顔をなで回していると、奏汰は、阿呆か、という顔をしていた。
先に食事を終えた奏汰は立ち上がり、
「早くしろ。
お前は電車だろ」
と言ってくる。
奏汰の車で乗せていってもらうわけにはいかないので、つぐみは最寄りの駅から電車に乗って通っていた。
はい、とつぐみも立ち上がりながら言う。
「そういえば、私、昨日、いつの間にか部屋で寝てたんですけど。
無意識のうちに移動したんでしょうかね?」