(完)最後の君に、輝く色を
絵の中に描かれていたのは、屋上だった。



屋上にいるのは俺。



俺は、空に体を向けているけど、顔はこちらを振り向いていた。



そして、泣きながら笑っている。



夏実は出会った日、俺のことをモノクロだと言った。



でも絵の中の俺はたしかにモノクロだった。



だけどそれだけじゃない。



屋上を彩る色たちが俺の体を包み込み、侵食していた。



モノクロと明るい色が混ざり合ったその姿こそ、今の俺だ。



そして、絵の題名は



『ここから、始まり』



痛いほどに伝わってくる。



夏実の力強いエールが。



今までの辛い出来事なんて忘れていい。



必ず手術を成功させて、新しい人生を始めればいいんだ。



夏実はずっとこの場所で待ってくれている。




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