(完)最後の君に、輝く色を
「ああっ、ちょっと何やってんの悠雅!
aじゃなくてbだって!」



「先輩…先輩がまた反省もせずに冬休みの課題全くしなかったからこんな朝っぱらからわざっわざ筆跡まで似せて手伝ってやってんすよ?文句言える立場っすかね」



「申し訳ございません全て私が悪いんです」



「はあ…ほらさっさと終わらせますよ」



「うんっ…ってあれ?夏実!?何やってんの」



教室に驚いた声が響き渡る。



あーあ
気づかれてしまった。



教室入ってすぐの棚とドアの間の隅間に身を隠していた私。



朝っぱらからなぜそんな状態だったのかはちゃんとれっきとした理由がある。



「昨日美術室に忘れ物したから早くきて、戻ってきたら、優菜たちがいたから邪魔しちゃ悪いかと思って描かせてもらってました」


「…え?」



不信感を隠せない様子で優菜は目を見開く。



そんな我が友にスケッチブックを見せると途端に目を輝かせて私の前に飛んできた。



「ええ、これ私たち!?やばいさすが夏実!!」


感情が素直に表情に出る優菜は心の底から嬉しそうにスケッチブックをまじまじと見つめた。



「これもらってもいい?」



「こんなのでいいならいいよ〜」



そう答えると、瞬間、優菜は私に抱きついてきた。



「嬉しい〜ありがとう〜っ!」



どうせ私の手元にあってもすぐに破り捨てられるものだもん。



むしろこんな駄作をもらってくれてありがとうって言いたい。



小学校からの親友の優菜とその彼氏を描いた絵。



2人が心の底から思いあっていることは1番にわかっているつもりだ。



なのに、絵から愛情は伝わってこない。



彼氏の悠雅くんが優菜を見つめるひたむきな瞳も、
優菜が悠雅くんを見つめる真っ直ぐな瞳も
何一つ描けていない。



目の前ではしゃぐ優菜を見て、また虚しくなる。



もし、100人にこの絵を見せてこの絵は上手いかと聞けば大半は上手いと答えるはずだ。


自惚れではなく。



だけど、人がよく通る街中の壁にこの絵が貼ってあっても誰も目を止めないだろう。



そんな絵なのだ。



外見だけで中身は空っぽ。



まるで今の私のような。



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