(完)最後の君に、輝く色を
夏実を送って、家に帰ると兄貴はもう帰っていた。



「お前、夏実ちゃんのこと好きだろ?」



急にそう問いかけてくる兄貴に素知らぬ振りで聞き返した。




「なんで?」



「お前のことどんだけ長い間見て来たと思ってんだよ。すぐにわかるさ」



「ふーん」




「どうすんだよ?俺、協力してやるぞ?」



「いらねえよ。あいつには好きなやつがいるし」



「そんなもん、奪ってしまいな」



自分のことのように楽しそうな兄貴。



俺のことを心から思ってくれているのはわかっている。



だけど、



「どうにもなんねえよ。俺なんかに好かれても迷惑だろあいつが」



どうにもならないことはわかっている。



幼い頃から叶わぬ夢を見て、何度も現実にぶち壊されて来た。



いつからか、希望を持つことはやめた。



返事のない兄貴を盗み見ると、兄貴は眉を下げて目を潤ませていた。



「悲しいこと言うなよ。お前さ、自分を諦めんなよ」



重石のようにその言葉が肩に重くのしかかる。



「どうやってこれが諦めずにいられんだよ。兄貴にはわかんねえよ、俺の気持ちなんて」




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