琥珀の奇蹟-WOMEN-
築30年を過ぎた賃貸マンションは、今時常備必須のオートロック機能もなく、セキュリティーにはいささか不安はあるものの、駅近な上に部屋も一人で使うには充分な広さで、格安。
エレベーターで3階まで上がり、部屋の前で手袋を外し、かじかんでしまった手で、玄関の鍵を開ける。
室内は案の定、予想通り外気と変わらず冷え切っていた。
入ってすぐに置いてある姿見用の鏡を見れば、そこには寒々そうな自分の姿が映りこむ。
化粧は崩れ、鼻の頭は赤く、両肩にはうっすら雪が降り積もり、せっかく巻いた髪も濡れてだらしなく伸びきってしまってる。
『ひどい姿…』
あまりの無様な恰好に、思わず自分で自分を失笑してしまった。
明日も仕事だし、風邪を引いてはいけないと、浴室でお風呂の湯を入れてから、リビングに向かい、早々に部屋を暖めるためにエアコンをつける。
部屋は、小さなキッチンのついたリビングダイニングの奥に、寝室として使っているもう一室があり、それぞれはそれほど広くはないので間仕切りの扉を外し、大きめのワンルームとして使用。
さすがにその広さでは、エアコン一台では暖めきれない。
コートを脱いでハンガーにかけ、寝室の壁際にかけると、ベットの前に置いてある、小さなファンヒーターのスイッチも入れる。
こちらはすぐに温風が出てきて、しばらくベットに座ったまま、噴き出し口に手を翳すと、その前から動けなくなってしまった。