琥珀の奇蹟-WOMEN-
ベットサイドの時計を見ると、時刻は午後10時5分。
…隆弘は、まだ仕事だろうか?
スマホを手に取り、何か連絡が入っていないか確認するも、隆弘どころか誰からのメッセージもなく、何だか世界中から取り残されたような感覚に陥りそうになる。
今夜はクリスマス。
せっかくだからと、部屋の片隅に飾った小さなクリスマスツリーの電飾のスイッチを入れるも、却ってその柔らかなブルーの光さえ、物悲しく感じてしまう。
テレビをつける気も起きず、ふと視線を上げると、さっきかけたばかりのベージュのコートがやけに目についた。
街で見かけて一目惚れしてしまい、自分にとっては高額すぎる値段だったけれど、ちょうどボーナスが出たばかりで、つい浮かれて買ってしまったもの。
まだ、購入してから数回しか着ておらず、隆弘には今日が初披露だった。
”…無駄遣いだって、叱られるかな?”
そう考えてから、そもそも無駄遣いも何も、自分で稼いだお金なのだから、自由に使って何が悪いのかしら?と、改める。
いつの頃からか、何かを決める時や迷った時、無意識に隆弘のことまで考えて行動するように、なってしまっているのかもしれない。
唐突に漠然とした不安に襲われる。