琥珀の奇蹟-WOMEN-
もう、トラブルは解消され、家に帰っている頃だろうか?それとも、会社で残務処理?
…さっきの、電話の向こう側にいた女性は、まだ一緒にいるのかな?
『フッ、馬鹿みたい』
不意に浮かんだ意味のない妄想に自嘲すると、湯船の中で膝を抱える。
そういえば、前に一度こんな風に約束をしていて会えなかった日、どうしても会いたくて、待ち合わせをしていたその足で、隆弘の会社まで行ったことを思い出した。
今考えたら、それはある意味ストーカー行為のようだけど、当時はもっと純粋な気持ちで、会えないことに、不安で怖くて、どうしようもなかった。
しかも、あの時は、一緒にいた隆弘の同僚の女性にまで、あらぬ疑いを持ち、もしかしたらその女性と…なんて、想像を巡らせては、いてもたってもいられなくなっていたっけ。
…と、そこで、あれ?…と、何かが引っかかる。
じゃ、今は?
さっき、同じように、会社の女性がまだ一緒にいるのか気になったのは、そういう疑いを持ったから…じゃなかったのだろうか?
考えて、すぐ否定する。
そうじゃない。
そういう意味で、隆弘を疑ったり、不安になっているわけじゃない。