琥珀の奇蹟-WOMEN-

もう、トラブルは解消され、家に帰っている頃だろうか?それとも、会社で残務処理?

…さっきの、電話の向こう側にいた女性は、まだ一緒にいるのかな?

『フッ、馬鹿みたい』

不意に浮かんだ意味のない妄想に自嘲すると、湯船の中で膝を抱える。

そういえば、前に一度こんな風に約束をしていて会えなかった日、どうしても会いたくて、待ち合わせをしていたその足で、隆弘の会社まで行ったことを思い出した。

今考えたら、それはある意味ストーカー行為のようだけど、当時はもっと純粋な気持ちで、会えないことに、不安で怖くて、どうしようもなかった。

しかも、あの時は、一緒にいた隆弘の同僚の女性にまで、あらぬ疑いを持ち、もしかしたらその女性と…なんて、想像を巡らせては、いてもたってもいられなくなっていたっけ。

…と、そこで、あれ?…と、何かが引っかかる。

じゃ、今は?

さっき、同じように、会社の女性がまだ一緒にいるのか気になったのは、そういう疑いを持ったから…じゃなかったのだろうか?

考えて、すぐ否定する。

そうじゃない。
そういう意味で、隆弘を疑ったり、不安になっているわけじゃない。
< 15 / 31 >

この作品をシェア

pagetop