琥珀の奇蹟-WOMEN-
浴室の白い湯気の中で、ジワリと込み上げてくるものを、グッとこらえる。
泣く必要なんてどこにもないはずなのに、何故か切なさが募った。
私達は、遠距離でも片想いでもない。
会いたければ、すぐにだって会いに行けるのに、いつの間にか、こういうことを素直に口に出せなくなっていた。
一緒にいてもいなくても、互いの気持ちを感じることのできる今、仕事の忙しい隆弘に、”会いたい”なんて口にするのは、すごく我儘な気がして…。
『あ~もうッ!』
反響する風呂場で天を仰ぎ、一人ぼやいて、もう一度大きく息を吐き、浴室内に充満しているラベンダーの香りを大きく吸い込む。
途端に、身体の細部まで、ラベンダーの持つリラックス効果が張り巡らされるようだった。
日付が変わる前に、こっちから隆弘に連絡してみよう。
だって今日はクリスマス。
我儘と思われたって、声が聞きたいし、会いたいものは仕方ないもの。
そう決めると、湯船から出て、充分温まった身体のまま、浴室を出る。